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20世紀末・日本の美術


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1999年(平成11年)
1999年(平成11年)
※ピンク色で貼付けてある事柄は、年表に出ていないが、登壇者により取り上げたいと希望があったものです。

中村:ノストラダムスの大予言によって地球は亡びるはずだったんですが…亡ぶことなく、世田谷美術館で「時代の体温 ART/DOMESTIC」展。東谷隆司(1968-)さんのキュレーションです。これちょっと世代論になってしまうかもしれないけれど、やはり楠見さんの世代って、初めて村上さん、楠見さん、椹木さん、つまりアーティスト、編集者、評論家が三位一体で一つのブームを作るっていうのが初めて意識的に行なわれたと思うんです。

眞島:そこに小山登美夫は入らないんですか?

中村:画商も入るっていうことですよね。要するに、初めてそういうアメリカ型の売り出し方をされた、それを同世代の仲間でフォローしていく、みたいな。でも東谷さんがやった仕事っていうのは、レアグルーヴDJじゃないけれども、世代関係ないんですよ。東谷さんは僕たちと同世代ですけれども、とにかく、面白ければどっからでも持ってくる。今、田中敦子(1932-2005)さんの展覧会(「田中敦子―アート・オブ・コネクティング」)を東京都現代美術館でやっていますが、田中敦子さんの再評価っていうのもこの「時代の体温展」がきっかけになってるんじゃないかな。つまり同世代をフォローするっていう感じがないんです。さきほど永瀬さんが「人と集まるのはカッコ悪い」と言われてましたが、僕たち世代はそうした上の世代に対して冷ややかなところがあったのかもしれない。それからモーニング娘。が前年にデビューしてるんですけど、「時代の体温展」のカタログのテキスト、最初の方、ほとんどモーニング娘。の話なんです。そういうのもね、椹木さん的なポップ文脈で美術を語るっていうのが定着している、そういう印象もあります。

楠見:東谷さんのすごいところは、日本の現代美術をモー娘。とか尾崎豊とかと接続しちゃうんですよ。「時代の体温」展の副題は「ART/DOMESTIC」で、彼のいうドメスティックはいかに我々日本人自身に密着しているかであって、その意味では椹木さんの「悪い場所」と同じ場所を差しながらそれを悪としていない、土着的なものを善しとしているふしがある。

中村:この年はあとコマンドNが「秋葉原TV」っていうのをやっています。これもストリート系だと思うんですが。

楠見:「秋葉原TV」は電気街を使ったメディア・アート展示の色合いが濃かった。「ザ・ギンブラート」で起動し「新宿少年アート」で拡散したストリート・アート、ゲリラ・アート的なものが、ここからきちんと新しい時代のパブリック・アートへと変わっていく瞬間でもあったんですよね。助成や後援をしっかりつけて、テーマは公共性へと変化してきた。

中村:そのコマンドNが、今の千代田アーツ3331になるわけです。こうやって十何年も経って3331になっていくわけだから、すごいな。中村政人さん一貫してやっていますね。ちょっと世代の話になっちゃったんで、ついでに言うと、この年昭和40年会とスタジオ食堂が一緒にトークショウをしています。これ世代間対立みたいなのはあったんですか?

眞島:えっとね、喧嘩したら面白いだろうっていう期待が多分あったんですが、全然ならなかったという(笑)。とても楽しい対談で。私は、会田さんか松陰さんから「眞島さんは真面目な人だね」っていうコメントを貰った、みたいなね。そんな感じでした。

中村:あしらわれた?

眞島:そういうわけじゃなくて、世代間対立っていうものが、演技としても機能しなかったということですね。敢えて対立に持ち込んで、煽り合って言葉を引き出して盛り上げるみたいなやり方が、ほぼ冗談にしか思えなくなっていた気がします。

中村:永瀬さん、この年セゾン美術館閉館です。

永瀬:最後はアルヴァー・アールト(Hugo Alvar Henrik Aalto/1898-1976)の展覧会(「アルヴァー・アールト 1898-1976」)ですね。これがどうのこうのっていうのはなかったのですが、一つあとでわかったのは、セゾン美術館っていうのは不動産開発の会社だった。
<※永瀬のこの発言、および以後のセゾン美術館と不動産開発を結びつけた発言は、後にご指摘頂いた通りで事実誤認です。セゾン美術館と国土は完全に切れていた。セゾン美術館に関わった方、並びに当日ご来場下さった方に謝罪いたします。>

中村:セゾン美術館ってみなさんご存知ですかね? 池袋の西武百貨店の中にあった大きな美術館なんですけれど。

楠見:もとは西武美術館。

中村:名前が変わってセゾン美術館ですね(西武美術館として1975年に開館し、1989年10月に改称)。

永瀬:セゾン美術館っていうのはこの10年くらい、90年代非常に大きかったと思うので、コメントをしたいと思います。建築家の展覧会、ル・コルビジェ(Le Corbusier/1887-1965)だとか、最後アールトですとか、デイヴィッド・スミス((David Roland Smith/1905-1965)とかのフォーマルな美術とかをすごい紹介したり、ギルバート&ジョージ(Gilbert and George)の展覧会もありましたし。そういうものを輸入する上で非常に僕たちなんかは、さっき言った「視ることのアレゴリー」なんかもありましたけれども、すごい眩しかった美術館なんです。
ただ、あとで振り返ってみると、なんでそういうことが成り立ったかというと、まずバブルっていうのが一つあった。それが終わったからセゾン美術館も終わったわけです。それからあるのは、今ある森美術館の構造と同じなのですが、不動産開発をしている会社が建築家の展覧会をすることの一つの意味っていうのは、非常に覚えておくべきだろうと。つまり、建築とか土木開発っていうものを称揚するっていうことは、明らかにコマーシャルな意味があったということです。あと「メタボリズムの未来都市展:戦後日本・蘇る復興の夢とビジョン」(2011年9月17日-2012年1月15日)がついこの間森美術館であったのですが、それはまさにそういう文脈で行なわれていて、あれは非常にエポック・メイキングであったけれども、ダメな展覧会だったっていうのは、メタボリズムにある「老化」「死」の可能性に触れなかった。「あの頃はよかった」っていう展覧会にしかならなかった。

楠見:みんなもう忘れかけてるけど、六本木ヒルズがある場所は昔六本木WAVEといってセゾン系の音楽メガストアと映画館の入ったビルだった。西武美術館もセゾン・グループ、つまり堤清二(1927-)さんの方で、むしろ僕が西武美術館・セゾン美術館に思い描くのは、経済や市場を新しくしていくことによってライフ・スタイルを換えていって、それによって新しい文化を創造していくという……。

中村:僕は今この二人のポップとモダンの対立を非常に嬉しく見ています(笑)。

楠見:ある意味では、20世紀前半のアヴァンギャルドが革命を通じてやろうとしていたことを、高度資本主義の日本で実現したのがセゾン・グループだと思うんだけど。西武美術館は80年代にそれこそロシア・アヴァンギャルドとプロパガンダ美術を集めた「芸術と革命」展をヒットさせたりしたんです。当時大学生でゲルニカやYMOを聴いていた僕はそこにニュー・ウェイヴのルーツを発見したりしたわけですが……そうそう、無印良品をつくったのも堤清二です。

中村:80年代のセゾン・グループの広告、糸井重里(1948-)さんとかのコピーとかそういう文化は本当に僕らに染み付いていると思うんですけどね。

永瀬:小説家の保坂和志(1956-)さんとか…。

中村:保坂さんが、西武コミュニティ・カレッジにいらっしゃった。それで、橋本治(1948-)さんの「恋愛論」講義なんかの担当をされたりしているんですよね。

永瀬:それから『絵画は二度死ぬ、あるいは死なない』っていう本を出した、林道郎(1959-)さんっていう上智大学の美術史、美術批評家の先生がいますけれども、この人も一時期セゾンにいたっていう。いろんな後の展開の種を蒔いている。

中村:これはそのままアールヴィヴァン(ART VIVANT)、ナディッフ(NADIff)まで繋がっていきますね。この年ね、宇多田ヒカルのアルバム(「First Love」)が700万枚売れています。CD700万枚ってすごくね? やばくね? 

永瀬:今1万枚売ったら大変ですからね。

中村:漫画もそうで、1995年に『少年ジャンプ』653万部というのがあるんですけど、今、ミュージシャンも漫画家も食えない時代が来たじゃないですか。90年代、僕たちの共通の話題は常にポップ・ミュージックが中心だったと思うんですけれども、今そうじゃないんじゃないか。

永瀬:きっかけの一つであると思いますが、1998年にiMacが出て、1998年、1999年にインターネットが一般化したっていうのをさっきバックヤードでしていたんですけれども。

中村:そうだよね。

楠見:要するにアンディ・ウォーホルが言った、「誰もが未来には15分だけ有名になれる」っていう時代が本当に来てしまった。

中村:本当にみんなバーバラ・クルーガーのTシャツを着ている時代が来ちゃった。


    昭和40年会とスタジオ食堂のトークショウ

    昭和40年会のビデオ映画『晴れたり曇ったり』完成記念展でのトーク。会場はNADiff(表参道)。<眞島>


    松蔭浩之

    写真家、美術家。昭和40年会会長。1965年福岡県生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業。http://mizuma-art.co.jp/artist/0220/<眞島>


    セゾン美術館

    筆者のとんちんかんな事実誤認で混乱させてしまったが、そのクロニクル自体で一つ展覧会があってもいい程重要な存在である。当時隆盛したデパート美術館とは一線を画し作品収集も行っていて、残った成果は軽井沢セゾン現代美術館で見ることが可能。99年以後はスタッフがセゾンアートプログラムとして残り幾つかの展覧会企画等を行った。現在朝日出版から出ている「絵画の準備を!」は、当初セゾンアートプログラムから出ていたことも記憶しておきたい。<永瀬>


    堤清二

    (つつみせいじ・1927-)は、西武グループを一代で築いた堤康次郎の二男。西武百貨店を中心としたセゾン・グループを展開した実業家であると同時に、辻井喬のペンネームで小説を書くなど文化人としての顔をもつ。いわば西武の黄金時代の“文化系”担当。いっぽう腹違いの弟である堤義明(1934-)は“体育会系”担当で、父から西武鉄道グループを任され、リゾート開発、西武ライオンズ、国土計画(現コクド)アイスホッケー・チーム、ウィンター・スポーツ選手の育成、長野オリンピック招致まで駒を進めたが、証券取引法違反で逮捕され堤王国の帝王学の闇の部分を露呈した。1980年代=西武の時代はこの堤兄弟がライバルとして競い合うかたちで左右の翼を拡げるように上昇したといえる。<楠見>


    林 道郎

    1959年生まれ。上智大学教授。美術史、美術批評。コロンビア大学で取得した博士論文の審査ではロザリンド・クラウスやジョセフ・コスースが激論を交わしたという伝説を持つ。古今東西の実作に当たった経験、隙のない文献知識、それらに囚われない作品への価値判断は帰国後幅広い信頼を得ている。案外ミーハー。あといい加減既発表の論考を単著で出してもらわないと困る。更に言えばセザンヌ論どうしたんでしょうか。<永瀬>

     

    iMac

    米国apple社の亡きスティーブ・ジョブズが送り出した家庭用パソコン。無個性なベージュのマシンとなっていたマッキントッシュにネット端末としての絞りこまれたコンセプトとそれに沿ったデザインを施した。日本でも1998年に発売され、ネットを一部の好事家のものから多数の一般の人たちへ開放した。<永瀬>

     

    インターネットがすごい一般化した

    ここで特筆すべきはそれまで既存の出版や放送といったシステムにふるい落とされていた無数の「発信」がwww上に津波のようにあふれた事である。美術の文脈で言えば、中村ケンゴのwebサイト「SPEECH BALLOON on the web」、kobaru氏による「美術野郎」等が目立った。もう一つ特筆すべきサイトとして古谷利裕の「偽日記」がある。1999年以来ほぼ毎日書き継がれる美術、映画、アニメ、小説などへの思考は一見美術批評など消えたかに見えた当時、唯一のアクチュアルなアート・テキストサイトだった。現在はブログ。<永瀬>

    中村ケンゴ(筆者)が主宰したアート系ウェブサイト「SPEECH BALLOON on the web」は、1996年に公開され、無料提供を受けていたサーバが閉じるまの2005年まで運営された。嶋田丈裕、野中モモ、love the life、丹伊田美沙子(現MISAKO & ROSEN)、實松亮などが参加。筆者は美術手帖1997年5月号「探検!アート系ホームページガイド」のレビュワーとしてサイトをセレクトしたが、当時、現代美術を扱うサイトはまだ数えるほどしかなかった。<中村>


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20世紀末・日本の美術ーそれぞれの作家の視点から
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20世紀末・日本の美術
ーそれぞれの作家の視点から
企画:中村ケンゴ
企画協力:MEGUMI OGITA GALLERY
音響機材:NORISHIROCKS
椅子提供:Civic Art
記録:小金沢智
ビデオ撮影:亀井誠治
販売協力:原花菜子
登壇者
眞島 竜男/現代美術作家
永瀬 恭一/画家
中村 ケンゴ(司会)/美術家
楠見 清(ゲスト・コメンテーター)/美術編集者・評論家
目 次
年表作成の為の参照文献
<年表作成の為の参照文献>
BRUTUS 2008年2/15号『すいすい理解る現代アート』/美術手帖 2005年7月号『日本近現代美術史』/山内崇嗣の美術史年表wikipedia『1990年代』FUKUSHI Plaza 『20世紀略年表』
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